昨日、買取りをさせて頂いたグラブ2点、お1人様のお客様が店頭に持ってこられた。
なかなか個性的でイケてるグラブの型だったので、どうしようかと悩みました。そのまま出すか
少し型をリセットして一般的なグラブに仕上げて店頭デビューするかなのですが、何故悩んだの
かというと、型のリセット加工をしてはたしてもとに戻るのか?かえって型崩れがおきて悪化
させないか?というリスクを考えてのことでした。かなりキツい型を付けている場合、本格的
にマシーンでプロ職人が丁寧に仕上げるので、どうやっても戻らない場合がある。
特に難儀なのは『あて取り』と称するグラブの型でペッタンコになるまで平たくつぶしてしまう
型付けでまさしく『フライパンか!』という具合のブツはお手上げになったりする。その時に
一時的型を付け直しても何年か経つうちに知らぬ間に元のフライパンに変身してしまう。。。。。
今回はそれと逆バージョンなのでこれはこれで難儀であったりしたのです。
温度管理された謎の秘密の薬剤に1時間つけ込んで革の隅々まで浸透させます。その後脱水をして
じっくりと乾燥させますが、乾く手前で型を付け直す為に叩きを入れます。まだしっとりとしていて
革に柔軟性が保たれています。手で揉んだり叩いたり引っ張ったりである程度の型を造ります。
その後は一切触らず固定したままじっくりと乾燥させます。これでリセット完了なのですが、
今回のグラブはやはりしぶとく、それでも60%ほどしか型はリセットされていません。限界です。
完成までに約3日かかる行程ですが、これで店頭デビューが出来ると思います。
余談ですが、このゼットのグラブ、ひょっとして幻でこの世に出てはならないグラブかもしれません。
ゼットのことはメーカーさんと直取引をしている関係上、よく本社にも伺いますが、このような
型(グラブ裁断をする金型)は見たことがありません。レーベル、品番、その他もろもろのデータ
は一切なく、ゼットのラベルが張られています。後からラベルを移植したり縫い込んだりした形跡
もありませんし、革の質はゼットプロステイタス硬式ランクの革なのです。恐らく試作品やサンプル
品だと思われますが、とあるメーカーさんにそっくりの造りでかなり出来もいいです。
お店では完成しますと普通に店頭に並べる予定ですので、このラベルのグラブを発見しましたら
要注目です。持ち込みのお客様は硬式とおっしゃっておられ、造り的にも硬式ですが、分かりませんので、
軟式として軟式コーナーでこっそり販売します。よろしくお願いいたします。